刀を買うときに見落としがちなこと
本日、拵の関係で相談があるとのことで、お客様が見えられました。
刀を取り出されて、「柄にガタツキを感じるんですが。」とのお話でスタートしました。
刀を振ってみると、確かにわずかですが柄に当たりのようなものが感じられました。
「簡単なやり方でよかったら、今、直しましょうか?」と言って、
一番簡単な方法で、柄のガタツキを補修しました。
ただ、柄はそれほどひどくはなかったのですが、お刀を見ていると、
もっと深刻な問題に気づきました。
鞘が破れているのです。
刀を持って鯉口を切ろうとすると、栗形の周辺に妙な手触りを感じました。
漆を、上からもう一度塗っているのです。
その部分が微妙に凸凹しているのです。
![saya_ware](https://ikedaart.biz/wp-content/uploads/2020/08/saya_ware.jpg)
「これは、」と思って、内側から覗き込んでみると、
栗形のあたりで、明かりが見えています。
鞘が栗形のあたりで、ヒビが入っており、
そこから光が覗き込んでいました。
これは、納刀の時に、少しずつ削られていって、鞘の木がどんどん薄くなって、
刀身が飛び出す一歩手前の症状です。
お客様にも覗いて貰いました。
よく見ると、鞘が割れて来て居るのが、直ぐに理解して貰えました。
珍しい事では有りません。
納刀の時に、早くするあまり、切っ先で、栗型の辺りを、削いで行く人は、結構居られます。
また、刀を買う時も、気を付けるポイントでも有ります。
そのため、当店で本歌の拵をしていただく時は、
ここに、角か銅板で補強を入れるのを標準装備としています。
上からペイントをして、ごまかしていることを考えれば、販売した業者は、これに気づいていたはずです。
道場によく出入りする業者から最近購入されたそうですが、ちょっと残念ですね。
実際に、刀を使うことを知っていながら、このような危険なものを平気で売るとは・・・
補修出来ない事も無いですが、替え鞘を作る方が確実で安いと判断し、
お客様と相談の上、その様にさせていただく事にしました。
写真は、鞘の鯉口から栗形にかけての辺りを撮った物ですが、
光の反射で真ん中に白い線が浮かんでいると思います。
最初は、こんな感じで、鞘に線が入り出すのです。
「塗装が少し傷んだのかな?」と思う位ですが、その線がだんだんと広がって、
ある日突然、刀身がそこからにょきっと顔を出します。
場合によっては、自分の手を突き刺して大怪我に成ります。
鞘は、合わせで、別の刀から取ってきた物の様で、先はガタガタと音を立てて居ました。
皆さんも、刀を買う時、
鯉口周辺や、栗形の辺りに変な凸凹が無いか確認してください。
線が浮かんでいたら、光にかざして、覗き込んで見て下さい。
気付かず使っていると大怪我の元ですから。
何事も、安全第一です。