刀を買うときに見落としがちなこと

本日、拵の関係で相談があるとのことで、お客様が見えられました。

刀を取り出されて、「柄にガタツキを感じるんですが。」とのお話でスタートしました。

刀を振ってみると、確かにわずかですが柄に当たりのようなものが感じられました。

「簡単なやり方でよかったら、今、直しましょうか?」と言って、

一番簡単な方法で、柄のガタツキを補修しました。

ただ、柄はそれほどひどくはなかったのですが、お刀を見ていると、

もっと深刻な問題に気づきました。

鞘が破れているのです。

刀を持って鯉口を切ろうとすると、栗形の周辺に妙な手触りを感じました。

漆を、上からもう一度塗っているのです。

その部分が微妙に凸凹しているのです。

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鞘のヒビ

「これは、」と思って、内側から覗き込んでみると、

栗形のあたりで、明かりが見えています。

鞘が栗形のあたりで、ヒビが入っており、

そこから光が覗き込んでいました。

これは、納刀の時に、少しずつ削られていって、鞘の木がどんどん薄くなって、

刀身が飛び出す一歩手前の症状です。

お客様にも覗いて貰いました。

よく見ると、鞘が割れて来て居るのが、直ぐに理解して貰えました。

珍しい事では有りません。

納刀の時に、早くするあまり、切っ先で、栗型の辺りを、削いで行く人は、結構居られます。

また、刀を買う時も、気を付けるポイントでも有ります。

そのため、当店で本歌の拵をしていただく時は、

ここに、角か銅板で補強を入れるのを標準装備としています。

上からペイントをして、ごまかしていることを考えれば、販売した業者は、これに気づいていたはずです。

道場によく出入りする業者から最近購入されたそうですが、ちょっと残念ですね。

実際に、刀を使うことを知っていながら、このような危険なものを平気で売るとは・・・

補修出来ない事も無いですが、替え鞘を作る方が確実で安いと判断し、

お客様と相談の上、その様にさせていただく事にしました。

写真は、鞘の鯉口から栗形にかけての辺りを撮った物ですが、

光の反射で真ん中に白い線が浮かんでいると思います。

最初は、こんな感じで、鞘に線が入り出すのです。

「塗装が少し傷んだのかな?」と思う位ですが、その線がだんだんと広がって、

ある日突然、刀身がそこからにょきっと顔を出します。

場合によっては、自分の手を突き刺して大怪我に成ります。

鞘は、合わせで、別の刀から取ってきた物の様で、先はガタガタと音を立てて居ました。

皆さんも、刀を買う時、

鯉口周辺や、栗形の辺りに変な凸凹が無いか確認してください。

線が浮かんでいたら、光にかざして、覗き込んで見て下さい。

気付かず使っていると大怪我の元ですから。

何事も、安全第一です。

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